NBR Study Navi 第23号 第45回日本毒性学会ポスター発表のご紹介
第23号 2018年8月1日 営業企画部発行
今回は、今年の日本毒性学会(大阪国際会議場;2018年7月18~20日)における、弊社からの発表演題を紹介します。本資料にてご興味をお持ちいただけましたら、詳細をお知らせしますのでお問い合わせください。なお、学会会場では各演題に対しまして発展的なご意見から厳しいご指摘まで、多くのご質問をいただきましてありがとうございました。
C57BL/6Jマウスにおける聴覚毒性薬物の影響
【目的】
今回、ヒト加齢性・進行性難聴と類似し、高音域の難聴を発症するC57BL/6J(以下、B6)マウスを用いて、聴覚毒性作用を有する薬物を投与することにより、聴覚毒性の発現の有無を確認した。
【方法】
群構成は正常群、フロセミド群、シスプラチン群、両薬剤の併用群を設定し、18日間の反復投与を行った。マウスの聴力測定は8、16および32kHzの周波数の刺激に対するABRを投与後19日に測定した。さらに、螺旋神経節細胞(SGC)をH.E.染色により観察した。
【結果】
フロセミド群およびシスプラチン群では、8および16kHz対するABR閾値は正常群と比較して有意な差は認められなかったものの、32kHzでは有意な聴力低下が認められたことから、周波数が高くなるにしたがって聴力低下は重篤化する傾向がみられた。両薬剤の併用群では、聴力低下がより顕著になった。
高音域から聴力低下を示し、フロセミド+シスプラチン群>シスプラチン群>フロセミド群>媒体群 の順で難聴の増悪が認められた。
国産ゲッチンゲンミニブタを用いた胚・胎児発生毒性試験に関する背景データ
【目的】
近年、ミニブタを実験動物として使用できる環境が整い、我々は2013年の本学術年会において、NIBS系ミニブタ(母動物9頭)を用いた胚・胎児発生毒性試験に関する基礎データを報告した。今回はゲッチンゲンミニブタを用いた基礎データを収集したので報告する。
【方法】
動物種/動物数 | ゲッチンゲンミニブタ/10頭 |
交配日月齢 | 8箇月齢 |
妊娠日 | 初回交尾動作確認日(妊娠0日) |
帝王切開日 | 妊娠108〜110日 |
検査項目 | 妊娠黄体数、着床数、胚・胎児死亡数、生存胎児数、性比、胎児体重 外表検査、内臓検査、骨格検査(アリザリンレッド染色) |
【結果】
NIBS系ミニブタでは、着床後死亡率の高値(43.8%)が認められ、被験物質の胚・胎児生存性に及ぼす影響が検出しづらくなる可能性が考えられたが、ゲッチンゲンミニブタにおける胚・胎児生存性データからは、著変な値はみられなかった。
引き続き背景データを集積し、生殖発生毒性に関するゲッチンゲンミニブタの特性を理解することで、ゲッチンゲンミニブタを用いた胚・胎児発生毒性試験は実施可能であることが示唆された。
骨格検査では、頚椎7個、肋骨14本を正常とした場合、頸椎欠損(11.5%)頚肋(38.8%)、短小過剰肋骨(11.5%)、肋骨癒合(4.2%)、頚肋と肋骨の癒合(4.2%)が認められた。
頸肋
頸肋と肋骨の癒合
ミニブタにおけるERG記録条件の検討について
【目的】
ミニブタの網膜電位図(ERG)を記録する際の条件の1つとして暗順応時間及び刺激条件につい
て検討した。
【結果】
暗順応時間の検討では、60分以降の波形に明らかな反応の違いがみられなかったことから、暗順応時間は60分が適当であると考えられた。
ERG刺激条件では、ISCEVスタンダードの推奨条件である、Dark-adapted 30.0 ERG の刺激条件は反応が強すぎ、ミニブタにおいては不適であると考えられた。因って、Dark-adapted 0.01、0.03、3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0 flicker ERGが適切であると考えられた。
ミニブタの網膜電位図の記録においては、暗順応時間が60分、刺激条件がDark-adapted 0.01、0.03、3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0 flicker ERGが最適と考えられた。
〔暗順応時間検討〕
マウス血液の血球算定におけるクエン酸Naの影響の検討
【目的】
マウスでは採血量に限度があることから、一般毒性試験において、クエン酸Naを用いる凝固系を省略または別個体で実施してきた。そこで、同一個体での血球算定及び凝固系、更には血液生化学的検査の実施の可否を検討するため、クエン酸Na血液とこれまで血球算定を実施してきたEDTA-2K血液あるいはヘパリンNa血液との算定値の比較を行った。
【方法】
使用動物:Crl:CD1(ICR)、週齢:10週齢
【結果】
クエン酸Na+EDTA-2K混合血液は希釈補正することにより、血球算定を実施可能であった。クエン酸Na血液を採取後、抗凝固剤処理をしていない血液を採取することで、ガイドラインに記載された一般毒性試験の全血液検査項目をマウスの同一個体で測定することが可能である。